オアシスの教育プログラムが目指すもの ― その成り立ちと特徴

背景

私はザンビア大学工学部で土木工学を学びました。卒業後は、エンジニアリング系のコンサルティング会社で働き,その後ロンドンの別のコンサル会社に転職しました。1994年から97年の3年間はイギリスとザンビアの会社を行き来し、計14カ月イギリスの会社で働いた後、日本にやってきました。

1997年11月に来日,その半年前に博士号取得のために来日していた妻に合流しました。私は当時、日本の大学院で学ぶことを希望していました。橋の設計に興味があり、来日前に素晴らしい数々の橋について読んでいたので、日本で橋梁設計を学べることに胸を躍らせていました。しかし、その夢は潰えてしまいました。大学院へ進学できなかっただけでなく、専門分野での仕事をも見つけることができませんでした。学費が捻出できなかったこと、日本語が出来なかったので、日本の大学に通うことができなかったのが主な理由です。

そんなある日、友人がYMCAで英語教員をやらないか?と声をかけてきました。英語を教えることに全く興味が持てませんでしたが、他にやることもないので引き受けることにしました。日々退屈でやることもありませんでしたので。

1998年4月、YMCAで英語を教え始めました。初めて受け持ったのは5歳児のクラスでした。当時の私はあまりに能力がなく、たった4人の子どもさえ上手に扱うことができませんでした。すぐにこの仕事を辞めることにし、上司に「子どもたちの時間を無駄にしているので、辞めたい」と伝えました。しかし、英語の堪能な日本人のアシスタントをつけてくれたので、私は教え続けることにしました。

ある日、埼玉で開催されたクリスチャンの大会に行きました。メインスピーカーは、すぐにできることがあるのに、何かできることを懸命に探している人々がいる、しかし、奇跡は、その人たちの手の中にある、なぜすぐできる事をやらないのか?と問いかけました。奇跡とは、すぐにできることだったのです。まるで、私のことを言われているように感じました。

その日の帰宅後、どうしたら英語を教えることが好きになれるのかと自問しました。そして、良い教師になれれば、きっと教えることが好きになれると考えたのです。それから、講師のセミナーに参加したり、ベテランの先生の授業を見学したり、教授法の本を読んだりして、教えることについて勉強し始めました。すると、みるみるうちに教えることが楽しくなってきました。

私はザンビアで育ち、学校に通いました。ザンビアは他のアフリカ諸国と同様、多言語国家です。73の民族がいて、その数以上に言語や方言があります。妻と私は民族が違うので、私と妻の母語は違います。私は妻の言語は理解できないので、二人の会話はほとんど英語です。時々、妻が話せる私の母語や日本語を使うこともあります。

ザンビアでは英語が公用語であり、学習言語の9割は英語、経済活動、マスメディアも英語です。私は7歳になって英語を学び始めましたが、それは私が話し始めた3つめの言語でした。

私は30歳の時に来日し、すぐに日本語を学び始めました。そのため、大人になってから新しい言語を学ぶという経験もしました。

学童期の語学学習経験、成人してからの語学学習の両方の経験から、日本で行われている英語教育や学習方法の多くは効果的ではないことがわかりました。そこで私は、どうすればより効果的に生徒の助けになれるかを考えるようになりました。

英語を学ぶには、少なくとも2つの方法があることに気づきました。最も一般的な方法は、英語について幅広く学ぶことです。文法、単語、表現、専門用語等、英語について実に多くを知っています。このグループの学習者は、英語を学ぶことが目的なのです。英語の専門家と言ってよいですが、ほとんどの人は英語を流暢に話すことはできません。

2つめは、色々なことを英語で学ぶことで、これは更に効果的な方法です。このグループの学習者にとって英語は学習の目的ではなく、むしろ学習するための手段です。つまり、学習者は英語を使って様々な科目の知識を増やしていくのです。

オアシスの学習プログラム

オアシスでは、生徒は英語で学びます。学習者はまず読むことを学び、そして読むことで学べるようになります。

私の語学学習の経験と知識から、人が言語を習得するためには、①模倣できる見本、②練習する時間、③実際に使用する機会、の3つが必須だと考えています。効果的な語学学習プログラムは、この3つを提供しなければなりません。しかし日本では、ほとんどの学習者は、効果的な学習のために必要な環境に接する機会が限られています。手本と接する時間、授業時間、実際に英語を使える機会も非常に限られています。

1.手本

言語は、経験豊かなスピーカーの話し方を聞き、それを真似ることによって習得されます。はじめは、言葉の意味を文脈から推量して理解していきます。オアシスでは、オーディオブックの音読を聞き、発音とアクセントを真似ながら音読することによって、自然に言語の法則を覚え基本的な文法を身につけていきます。

2.練習

語学学習は知識の習得というより、歩く、走る、ピアノを弾く、自転車に乗る等、技能と言ってもいいでしょう。学習者はまず観察し、長い時間をかけて、かつ効率的に練習しなければなりません。上手くなるまで何度も何度も繰り返すのです。効率的な練習以外に上達の近道はありません。専門家によれば、流暢に話せるようになるには1万時間の練習が必要だそうです。専門家の説明、分析を聞くことは知識を得るためには重要ですが、技能の習得には十分ではありません。

オアシスでは、学習者は本を何度も読み返し、また、English Olympicsで本を暗唱することで、実践する機会を提供しています。

3.実践

技能を伸ばすには、何度も実践しなければなりません。実際に言語を使用することで、深く理解し、創造力を伸ばしていきます。オアシスでは、授業だけでなく、英検などの試験を受けることで機会を提供しています。

Education That Endures , ETE - 持続する教育

学校や家庭で英語を使わないため見本がいないという状況、少ない練習時間、実践する機会の欠如といった日本での英語学習者が直面している状況を変えるため、私はETE“Education That Endures - 持続する教育”という方法を考え出しました。学習環境や状況にかかわらず応用できる方法です。つまり、持ちこたえる学習法である。ETEの第1の目標は、学習者に学ぶ意義を教えること、第2の目標は学習習慣を身につけること、第3の目標は学習する技能を伸ばすことです。ETEの特徴は次の3つです。

1.個人に合わせた学習で、個々のペースで学べる

2.教室に居なくても自主的に学べるため、次の授業までの期間に多くを学ぶことができ、学びのスピードが加速する

3.授業で配布された教材の範囲を超え、深く広く学ぶことができる。

ETEは以下の学習法によって成り立っています。

1.知覚学習

知覚学習とは、五感を使って理解するという経験を重ねて、理解力を伸ばしていくものです。言葉とは、基本的に触れることによって感覚的に理解していくものです。子どもが初めて特定の言葉を耳にしたとき、例えば「悲しいってどういう意味?寒いってどういうこと?」とは尋ねません。言語能力が十分でない子どもに説明できる方法はありません。子どもは五感を使って直感的に言葉の意味を理解するのです。私たちも、親や周りの人の言葉遣いを真似しながら、正しい言葉の使い方を覚えてきたのです。

オアシスでは、本を読むことを通して英語に触れます。目的は英語について学ぶことではなく、英語で学ぶことです。英語は目的ではなく知識を得るための手段です。この学びは、理解、記憶、創造、表現の4つの段階を経て習得されていきます。

学習者は既知の知識と文脈から理解します。そして、反復を繰り返して記憶していきます。記憶した言葉を組み合わせ意味のあることを伝えます。それから、話したり文章を書いたりしてコミュニケーションをとるようになります。

2.ブレンド型学習

ブレンド型学習とは、対面形式の授業とオンラインや他の媒体を利用した学習を指します。対面での学習時間が限られていることによる弊害が取り除かれます。

3.反転授業

反転授業とは、教室以外の場所で多くを学ぶことです。学習者は教室に居なくても、より多くの教材をより深く学ぶことができ、これによって、限られたレッスン時間という制約を克服することができます。

学習意欲を高めるには

学習者が教師や教室から離れているときに学びが深まるため、オアシスでは、学習者を支援するため次の3つに重点を置いています。

1.オアシスのプログラムは、言語そのものよりも内容に重点を置くことで、学習者に英語を学ぶ意義を説いています。本を読むときは内容を理解し設問に答えるため、英検においても設問に答えるためです。スペリングや作文練習は、スピーチや英検での作文が書けるようになるために行っています。

2.学習者に学習習慣を身につけてさせます。
音読カードは学習を習慣づけるためのものです。カードには4つの段階があります。まず、週に3冊読書の宿題を出すことで、学習者に明確な目標を与えること、次に課題を完了することで報酬を与え、動機づけをすること、更に、継続的に努力しているか確認すること、最後は本当に能力が身についているか確認することです。

3.英文を読めるようになることで、英語で学んでいく能力を得ていきます。学ぶ技術を身につけるには、学習者はぬるま湯に浸かった状況から一歩踏み出さなければならず、そのために常に励まされ、刺激され、動機づけされなければなりません。失敗を犯す不安を克服しなければなりません。挑戦し続ける学習者は、失敗も多いですが進歩も早いのです。人生の早い時期。最も大切な時期に難しいことに挑戦することは、学習者に大きな成長をもたらします。難しい教材の10%の内容しか理解できなくても、簡単な内容の教材を完全に理解するより多くの能力を得ることはできます。100の10%は100%の1よりも価値があるのです。

学習を習慣化するには

学習習慣が身につくまでは相当時間がかかります。始めるのは早ければ早いほどいいのです。まずは聞いたことを真似して言ってみることから始めます。次は音声に合わせて音読することへ進みます。そして、読書を習慣化していきます。読んでいる内容を完全に理解する必要はありません。時間をかけて読んでいくうちに、自然と理解するようになります。年少者は、一つのことに集中できるようになることから始めましょう。まずは一日数分から。そして徐々に時間を伸ばし、課題を一つ終えるまで椅子を立たないようにすることが目標です。

学習習慣と能力が身につけば、他の科目にも応用できるでしょうし、良い成績を収めることができます。私の次女は学習習慣が身についていたので、塾に行かずに中学受験することができ、素晴らしい成績で合格、特待生で入学しました。私たち親の日本語力では彼女を助けるのは困難でした。唯一できたことは、オアシスの音読カードのような適切な教材をオンラインで見つけることと、勉強のスケジュール管理だけでした。このように、学習習慣と能力が身についた子どもたちは、他の教科でも成果を上げています。

英検の効用

英検を定期的に受験する生徒は、総合的な英語力を伸ばしているだけでなく、継続して学び続ける傾向にあります。英検が明確な目標となり、学習意欲を高めます。試験は能力を客観的に測る物差しを提供してくれます。読書、授業への出席と同様、定期的に英検を受けることはオアシスプログラムの大変重要な要素です。学校のテストと同じで、好き嫌いにかかわらず試験は受けるものです。学習過程において重要だからこそ、試験を受けなければなりません。英語力を伸ばせるだけでなく、中高大入試に役立つ資格取得にもなるのです。

オアシスプログラムの二本の柱

英語の本を読んで英語を身につけること、および英検受検はオアシスの二本の柱です。学習者に明確な目標を示し、継続的に学んでいくことを促すことがオアシスの使命です。

代表   サカラ サイモン (Simon Sakala)

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